第25章 起憶
side青峰
「…あの……嫌…だったら……」
思いがけねぇみさきの返事にこっちが絶句して固まってると、さっきよりももっと小せぇ声で話して俺の袖口から手を抜いた
黙ってたせいで勘違いさせた…
誘い方は分かりにく過ぎんのに言葉はめちゃくちゃストレートで、しかもみさきからそんなことを言ってくれるなんて全く思ってなかった
「嫌な訳ねぇだろ」
「ほんと?…無理してない?」
無理してねぇか聞きてぇのはこっちの方だ。
あの時の事を思い出させられて、また自分が俺に我慢させてるって思って無理して言ってんじゃねぇのかすげぇ心配になる
「俺が無理してる訳ねぇだろ。お前の本心でそう言ってくれてんなら俺は遠慮しねぇ」
「本心だよ。……いっぱい…くっつきたい」
初日に聞いた震える声とは全く違う、小せぇけど照れてるときの話し方と声で、ちゃんと俺を見て言ってくれた
めちゃくちゃ恥ずかしがってんのかすぐに顔を隠されちまったけど、俺の胸に押し付けるようにしてくれたことが、みさきは怖がってねぇんだって教えてくれてるようだった
ガウンの紐を引っ張って結び目を解くとキャミソールを着てて脱がせていいのかいけねぇのか……
あんときはキャミソールは着てなくて自然とああやってくっついたけど、これは…どっちだ??
なんか自分でも笑っちまう
こんなに慎重になったことなんてなかったせいか、こういう時どうしていいのか全く分からねぇ
今まで女と適当に付き合ってきたツケが回ってきた
「これは?」
…ダサすぎだろ……
けど、みさきの言葉を拡大解釈して怖がらせるよりはダサいと思われた方がマシだった
「それは……でんき…消してから……」
消え入りそうな程小さい声だけど、脱がせていいって返事でよさそうで、つけっぱなしだった間接照明を消した
猫耳が見れねぇのは惜しいけど少しでも先に進もうとしてくれてんならみさきの要望はすべて聞いてやらねぇといけねぇって思ってる
裾から手を入れて腹に触れると……
震えてる…
少しだけど確かに震えてて肌は少し汗ばんでる
「みさき?」
「…ん?」
声は怖がってる感じじゃねぇ。
けど、やっぱ震えてんのを無視していいことにはならねぇ