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最愛 【黒子のバスケ】

第25章 起憶


暴言が止まらないあたしを止めてくれたのは、いつもの優しい腕だった。

「もう…やめろ。俺が全部聞くから、今はもう何も喋るな」


張りつめた糸がブツリと音を立てて切れて視界がぼやけて……水滴が頬に流れ落ちた。

落ち着かせるようにあたしの背中を撫でて、崩れそうになる体を力強い腕がしっかりと支えてくれた。

『控室に連れて行って』

パットの声に今は仕事中だったことをこの時やっと思い出した。

『…すみま…』

『カレン、あんたはやりすぎよ。この子はあたしにとっても大事な子なの。仕事で不出来なことがあって文句を付けるならいいけど、男の取り合いで卑怯な手を使って傷付けるのは許さないわ』


職場で自分の招いた人に助けてもらうなんて…

あたしは何をしているのかと思う反面、今はもう全ての優しさに甘えてしまいたかった。

『メイク道具はあたしが持ち帰るから、今日はもう上がりなさい』

『……はい…』


怒られてもおかしくないこの状況で与えられる優しさに、あたしの弱さが溢れて次々に水滴を落とした


支えられて部屋を出て、エレベータに乗るとギュっと優しく抱きしめてくれた。


「もっと早くこうするべきだった。…ごめんな」



違う

そうじゃない


そうしてってお願いしたのはあたしだった


あたしの意思を尊重してくれてた


だから謝らないで



そう言いたいのに、今のあたしはまともに言葉を発することができなくて、首を横に振ってそうじゃないってことを伝えるのが精一杯だった。

パットとの控室に戻ってバスルームに入ろうとすると優しく引き寄せて、あたしの身長まで目線を下げてくれた。


そっと握られる両方の手首

優しくて温かくて大好きなこの手


「一人で泣くな。俺がいる時まで一人で抱え込まなくていい。一緒に乗り切る約束だろ?どんなことも二人で乗り越えるって約束しただろ?」

あたしがバスルームに閉じこもるつもりなのを青峰君は分かってた。

迷惑かけた挙句泣いてるあたしの相手をさせるのは申し訳なくて、ここまでしてもらったんだから後は一人でどうにかしようと思ってた。


どんな言葉も思いつきじゃなくて本心で、行動で教えてくれる

あたしはまた一つ教えられた


一緒にっていうのは楽しいときだけじゃなくていい




バスルームに入るのをやめて目の前の胸に強く抱き着いた。
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