第19章 林檎が落ちた
その後、ユリアはエルヴィンと話さない日々が数日続いた。
その間、ユリアはエルヴィンに見せつけるように突然家に男友達を呼んだり、朝帰りをしたり、外泊をする日を続けた。
リビングで会ったエルヴィンから言葉は無いが、目はどこか怒りを含んでいた。
「こうなって欲しかったんでしょ」ユリアは小さく呟いてリビングから出た。
その夜。久しぶりに一人自室でスマートフォンを弄り、予定を入れる為に友人に連絡を取っていた。一段落着いたし、時間も時間だということで電気を消してやり取りをする。
突然、部屋のドアが開いた。廊下の電気が部屋に射し込んでくる。入ってきたのはエルヴィンで、ユリアの部屋のドアを開けたままで近付いてきた。
掛け布団が引っ剥がされてエルヴィンが馬乗りになる。
あっという間だった。
ユリアが言葉を発する前に、エルヴィンからキスが落とされた。荒々しく、怒りを含んだキス。大きな手のひらが両手を頭上にまとめ上げ、空いた手は顔を掴んで逃がさぬようにする。
「っや、めて……!お父さん!!」
「やめて?これが望みだったんだろう」
「嫌っ……こんな、やめて!」
「あんなに挑発するなんてな。予想外だったよ。遅めの反抗期にしては尻軽すぎやしないか?」
エルヴィンは首筋に強く吸い付いた。チリ、と痛みが走る。
「痕、ダメ……!」
「俺に付けられるなら本望だろう」
エルヴィンの意図は分からない。ユリアはただされるままに痕が付けられるのを見た。
「そう、いい子にしていれば痛い事はしない。ユリアは昔から察しも良かったからな」
撫でられた頭。まだ身体が少し震えている。
「嫌なのか?」
「や、じゃ……ない。びっくりしただけ」
本当に少し驚いた。抵抗をやめる。これは作戦通りだからだ。
正直賭けではあったが、エルヴィンにあからさまな素行の悪さを見せた。こんなに上手くいくとは考えていなかったがエルヴィンの心に火を付けたらしい。