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モデルのボーダー隊員~番外編~

第8章 年中行事〜母の日・父の日〜


城戸視点

2人が帰ってから、暫く受け取った花束とプレゼントを眺めていた。
花束は黄色いバラがメインのもの。プレゼントは私の好きなコーヒーのセットだ。
まさか、迅や明希から父の日の感謝を受ける日が来るとは思わなかった。昔のように笑わなくなった私に、あの子達に酷なことを散々言ったりしてきた私に、父親代わりの資格なんてあるはずが無いと思っていた。
2人から感謝された事だけでも十分に驚いたが、これ以上に更に驚く事など何があるのだろうか。思考を巡らせても何も思い浮かばない。
それよりも、今は目の前の仕事を片付けなくては...と、デスクに目をやると、山積みになっていたはずの書類が半分程になっていた。

(どういうことだ)

椅子まで戻ればデスクの中央に、途中だった資料の代わりに紙切れが置かれていた。

【城戸司令
突然の事で驚かれていることと思いますが、本日は父の日なので城戸司令に少しでも楽をしてほしいと思い、司令の資料を少々拝借致しました。
尚、忍田本部長・根付メディア対策室長・鬼怒田開発室長・唐沢営業部長・沢村本部長補佐・各支部の支部長にも同様の理由から同じ事を行っております。
日頃の感謝を伝えたいという隊員達からのささやかな贈り物です。どうか、拒まず受け入れて頂けると幸いです。
隊員代表 東春秋】

読み終わると同時に背後の椅子に深く座り込んだ。

(東隊員のことだ、隊員達が見てもいい範囲の物だけを持って行ったのだろう。後でこちらからも礼を伝えねばならんな。...まったく、なかなか嬉しいことをしてくれる)


自身でも気付かぬ間に口角が上がっていく。気付いた時には、肩を震わせて幸せを噛み締めている始末だ。

紙切れを持つ手が緩み、重なっていたのであろうもう1枚の紙がカーペットに落ちる。
拾って読み進めると、今日一の驚くべき内容が書かれていた。

「これは...回避不可能な未来なのだろうな...」

迅でなくともわかる鮮明な未来。今でさえ深い溝を、更なる深みにまで至らせるようなクズではない。

手元の仕事をさっさと済ませ、彼女との約束に遅れないよう、手土産も忘れぬようにと心に留め、手と目を動かす。
その時の私はおそらく、傍から見れば何処と無く嬉しそうであり、楽しそうでもあったであろう。
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