第5章 朝の喧騒
瑠璃を探して馬を走らせていた政宗と光秀
「複数の人間が歩いた跡と、引き摺られた跡だな」
細い道に残る跡を見つける。
「その先をみろ。瑠璃の草履だ」
見れば、転々と草履が落ちている。
「何が目的だ?」
「さあな。
瑠璃を拐って売り飛ばす奴等か、
瑠璃を使ってお前をおびき出す奴等か、
のどちらかだろう」
光秀が薄く笑う。
「ふぅーん。
どっちにしろ、斬られて死にたいらしいな」
獲物を見つけた動物の様に、政宗の眼が鋭く光る。
「右肩の治りを見てみる事にするか」
不敵に笑うと小道を慎重に馬を歩ませ始めた。
少し行くと、急拵えの掘っ建て小屋が
現れた。
「おーい。
そこに居るんだろう。
出て来いよ。
ッツたく、舐めた真似してくれるなぁ。
たいした力も考えもないくせに。
こんな、近くで人質を取って籠るなんて」
馬から降りず、小馬鹿して、見下した台詞で挑発し、中の相手が出てくるのを待つ。
暫くの静寂のあと、ガラリと戸が開き、
意識の無い瑠璃を盾にして十数人の侍が出て来た。
「人攫いでは無いようだな。
…て、事は相馬の流浪か……」
政宗は片方の口角だけを上げて冷やかに笑う。
「周りも囲んでるんのか?
でなきゃ、俺の首は取れねーぞ」
口の滑りは滑らかに余裕綽々だ。
「政宗、さっさと済ませろ」
政宗の余談に光秀が口を挟む。
「分かってる。
そろそろ、腹も減って来たからな。
早く帰ろうぜ」
馬を降りた政宗は、楽しそうに、抜刀する。