第29章 慈愛の時間(R18)
(飲み下して欲しいような…吐き出させたいような)
欲と理性の間で悩まされる。
「ーー……」
どうすべきか迷っていると、喉元が動き嚥下された。
謝るべきか、礼を言うべきなのかも分からなくて、言葉がなかった。
「まさむね…言っていいのに」
先に口を開いたのは瑠璃
少し恥ずかしそうに、でも、柔媚に。
「私…政宗のモノでしょ?…命令、しても、いいよ」
醸郁(じょういく)※の言葉と笑みを放つ。
「お前、それ……」
(何言ってるのか、分かってるのか…?)
瑠璃の言葉を嬉しく思うより先に惶惑(こうわく)した。
※釀郁…香気を放つ、芳しい匂いを醸す。