• テキストサイズ

【FF7 ヴィンセント BL】Halloween Night

第1章 夜の始まり


だいぶ傾いた陽が、少しずつ、西の山脈へと近付いている。

ニブルヘイムの村を訪れたリオは、
「旅人さん? いらっしゃーい!」
頭から白い布を被り、布に開いた二対の穴から眼だけを覗かせた子供に元気よく迎えられた。
「…、こんばんは、」
こんにちは、と言い掛けて、子供の"オバケ"らしい格好に、思い直した。
子供は、ふふふふふ、と楽しそうに肩を揺らした。
「今夜は、オバケが出ます! お菓子の用意をお忘れなく!」
「………ああ、…ハロウィンなんだね」
お菓子と言われて、漸く子供の格好に納得する。
小さな村だが、今夜はハロウィンのお祭りで、この子ははしゃいでいるのだろう。
見回せば、村の中も、それらしい飾り付けが所々に施されていた。
「宿屋はすぐそこ、お菓子はその隣のよろず屋で売ってまーす!」
「わかったよ、……ありがとう、」
布の先から辛うじて出た指で建物を指し示す子供に、リオは腰を屈めて目線を合わせ、にっこりと笑い掛けた。
「…うん、…お、お姉ちゃん、またねっ!」
小さなオバケはもじもじと照れるように動き、吃りながら言って、ぴゅうっと駆けて行った。
その様子を見送り、立ち上がったリオは一人苦笑した。
「……男、だけどね」
狭い視界の中で、リオの顔だけを見て、咄嗟にそう思ったのだろう。
尤も、男と判っても、反応は大して変わらなかったかも知れない。

「………ハロウィン、ね」
首を傾げると、緩く編んで纏めた銀髪がさらさらと揺れた。
リオが佇む場所に、仄かに甘い香りが漂い始める。
リオは銀色のふさふさの睫毛を僅かに伏せると、その香りから逃れるように、足早に宿屋へと向かった。

「ああ…御免なさいね、今夜はお祭りで、近くの村からお客さんがいっぱいで」
宿屋の女将は宿帳を捲りながら済まなそうに言う。
「そうですか…」
「近くって言っても、今から向かったんじゃあ夜中近くになっちゃうしねえ…この辺りは田舎だから」
「仕方ありません、野宿も慣れていますから」
大丈夫です、と言ってリオは立ち去ろうとしたが、女将が呼び止めた。
「あっ、あー、あの、領主様のお屋敷なら、泊めてもらえるかもしれないよ」
「…領主様?」
/ 17ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp