第4章 一寸混ざった、世界のお話
「現世で会うのは初めてじゃあないかい?」
「そうだねぇ。いつも狭間であっていたから。『力を使って会いに来てくれていた』と思っていたから会えなくなって心配していたんだ」
「……力を使って?」
先刻の話か、と中也は太宰に近づく。
「手前が、何か道を通って三途の川まで来ていたと思ってたらしいぜ」
「え。君が扶けてくれていたんじゃあないのかい?」
驚く太宰に少し考える狐。
「まあ、帰り道は示してあげていたから結果扶けていたことになるね」
「じゃあ、そうじゃないか。有難うね」
「……。」
感謝の言葉を述べられて、少し困惑する狐。
「まあ、会えて良かったよ。君にも『中也』にも。会えていた理由が判ったことだしね」
苦笑する狐。
「「!?」」
それと同時に体が透け始めた。
「世話になったね、『中也』。君も自殺未遂は程ほどにし給えよ」
完全に姿が消えそうになる。
消えてしまえば、もう二度と会えない気がした。
二人は同時に手を伸ばし、叫んだ。
「「待て!!『紬』」」
「!?」
とっさに出た言葉ーーー。
そのせいか、薄れかかっていた姿がハッキリとしたものに変わったのだ。
「え………何で私の名前」
「君、紬って云うの?」
「手前、紬って云うのか」
狐………基、紬は頭を抱えるのであった。