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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第12章 【秀吉・後編】※R18


ひらり…

『きっと舞様に見せて差し上げたいでしょうね…』
竜昌は黙って崖下を見つめていた。
「────紅葉の錦 神のまにまに、だな」
秀吉がうっとりと紅葉を眺めながら、百人一首の一節をつぶやいた。
同時に、竜昌は眼下の渓流を見ながらまったく別の句を思い浮かべていた。
『瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の────』

「…われても末にあわんとぞ思う」

「ん?」
秀吉が竜昌を振りかえったその時、崖の上からパラパラと小石が降りかかってきた。竜昌が視線を上げたその時、
「上だ!!」
秀吉が大声で叫ぶと同時に、腰の刀を抜き去った。
家来衆たちも一気に我に返り、抜刀する。
秀吉は馬を降りた竜昌を背にかばい、春雷との間に挟むようにして、刀を構えた。
数人の黒装束の男たちが、音もなく一行の間に降り立ち、間髪を入れずに襲い掛かってきた。
この狭い渓谷では逃げ場はない。あっという間にあたりは剣を交える音と、男たちの怒号で騒然となった。
その時、黒装束のうちの一人が、秀吉めがけて襲い掛かってきた。
秀吉はその刀を悠々と受けて跳ね返すと、逆に踏み込んで、大太刀とは思えない素早い振りで、相手の喉元を一閃のもとに切り裂いた。
『秀吉様…強い!』
今まで一度も秀吉と手合わせをしたことのない竜昌だったが、その腕前はいまの一太刀で明らかだった。さすがは信長の一の家臣を自負するだけのことはある。
次に黒装束は、二人がかりで襲い掛かってきた。竜昌も、思わず秀吉に借り受けた懐剣の柄を握りしめる。
しかし秀吉は余裕の表情を崩さなかった。
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