第14章 ◆番外編1「猥本」
本の中身にパラパラと目を通した長谷部さんはどんどん怖い顔になっていき、終わると「鶴丸め…」と低い声で呟いていた。
長谷部さん、全然嬉しそうじゃない…。
鶴丸さんったら、私に嘘を教えたのかな…。
でもこの間の湯屋ごっこはすごく喜んでもらえたから、大丈夫だと思ったのに…。
「…長谷部さん…ごめんなさい…」
喜んでもらえなかったことが悲しくて、私はうつ向いた。
涙声がバレてしまい、長谷部さんは慌て出す。
「主っ…」
「…私、分からないことばかりだから、少しでも知識をつけたかったんです…。床上手なほうが、男の人は喜ぶって言われたから…。…長谷部さんに喜んでもらえると思って…私…」
涙がこぼれ落ちそうになりながら、そう釈明した。
でも…結局、失敗してしまった。
やっぱり下手くそなのかな…。
私はしてもらうばっかりで、長谷部さんに喜んでもらうことはできないの…?
悔しくて涙を拭うと、突然、長谷部さんは私を抱き締めて、ぎゅーっと力を込められた。
「長谷部さんっ…?」