第10章 新米探偵に依頼あり
彼等のやり取りを全く気にする事なく凛は二人に文字が綴られた紙を渡した
智晃
「これは?」
凛
「渡會さんが通っている大学でご友人が消えたと言っていた方の名前を教えてもらったんです。数人いらっしゃったので三人で手分けして話を聞いた方が早いと思いまして」
智晃
「顔分かんねーけど…」
凛
「…………」
智晃
「おい」
凛は智晃の言葉に、ぱちぱちとやや早めの瞬きをしながら固まってしまった。
それを見た智晃は突っ込んだが、凉晴は慣れているのか特に反応する事もなく渡された紙をじっと眺めた後
凉晴
「捜せば良い。聞いているうちに今日、出なかった被害が分かるかもしれない」
智晃
「確かにそうか…」
凉晴の言葉に凛は笑顔を浮かべて何度も首を縦に振るのを見て智晃は小さく苦笑した。
明日から始まる聞き込み調査に備えて今日は解散する事になり、智晃は自宅へと帰っていった。
凛
「向こうで何か変わりありませんか?」
入浴や食事を終え落ち着いた頃、事務所下の居住空間で問い掛けられたそれに凉晴はソファに背を預けコーヒーを啜ってから頷いた
凛
「そうですか…良かったです」
凉晴
「だが、いつもの騒がしさはない気がするな」
凛
「ふふ、そうですか。でも、凉晴はそれくらいが好みなのでは?」
凉晴
「まぁな。…けど、退屈なのは認める」
彼からの上に居る他の仲間の様子を聞いて想像したのか凛は楽しそうな笑みを浮かべていたが、凉晴の一言に数回瞬きをした
凉晴
「あいつらが静かなのは気持ち悪い。早く奴の力を戻してさっさと帰るぞ」
少し照れ臭いのか早口になり顔を僅かに逸らす凉晴を見て凛は目を細め嬉しそうに柔らかく笑んで頷いた。
何やら敵意のような物を智晃に向けていて凛は心配をしていたが、協力するつもりがあるらしいのが嬉しいようだ。
凛
「明日から頑張りましょうね、凉晴」
凉晴
「嗚呼」
それから二人は少し会話をしてから休んだ