第69章 愛しい人へ。

＝氷室side＝
暗い部屋の中、わいわい騒ぐテレビの音だけが響く。
俺は一人ワインを飲んでいた。
え？秋田とアメリカどっちかに行くと思ってただって？
ﾌﾌﾌｯ、残念ながらどちらとも行けなかったよ。
この吹雪の中、どうやって飛行機が飛ぶと言うんだ。
最悪だ。敦にもアレックスにも会えない。
一人でいることは多いけどこんなときまでっていうのはさすがに寂しいー・・・。

ん？

メールが来た。敦からだ。

12時丁度におくると込み合って送れないから
ちょっと早めに送るねー。あけおめ～
お菓子持って秋田遊びにきてね～。

か。
敦らしいな。込み合うからを理由にしてるけど、
どうせ後で忘れるから。とか。
年賀状は面倒だから。とかだろ。
でも単純に嬉しかった。ありがとう敦。

携帯をいじってると、見覚えがある写真がでてきた。

氷室「これは・・・あぁ、キャンプの時か」

雅が撮ってくれたんだな。川での写真か。懐かしい。
これはー・・・ハロウィンか。
雅の魔女姿撮ってたんだな、俺。
・・・待ち受けにしようかな←
これはクリスマス。これは・・・
お、お花見のときだね。楽しかったなー。
・・・色々あったな。今年は。
濃い一年だった。楽しいことがありすぎて。
来年はー・・・

もっと濃い一年にしてやるさ。
なんせ雅をGETするのは俺だからね。
二人きりの時間が増えますように。

暗い部屋でただ一人で気持ちまで暗かったはずが、
いつもまにか明るくなっていた。