第63章 月の王子と星の姫。
自分の感情は声にださぬまま、
また時がすぎた。
クリストフは今日も果物を買いに来てくれた。
そして一枚の手紙を、ナターシャにさしだした。
ナターシャ「これは」
クリストフ「招待状だ」
ナターシャ「なんの?」
クリストフ「舞踏会だ。」
舞踏会。ナターシャにとっては縁のないものだった。
この招待状を持っているということは、やはりクリストフは王家の人だと気づいた。
ナターシャは不思議なことに、王家の人がこんな村娘と一緒にいていいのか、という感情はでてこなかった。
ただ、クリストフは私といて楽しいのか。
その感情はでていた。
クリストフ「お前と一緒に行きたい。」
ナターシャ「気持ちは嬉しいわ。だけど私、ドレスなんて持ってないの。ごめんなさい」
クリストフ「ドレスならお前の家に送った」
ナターシャ「えっ」
思わず声をあげてしまった。
住所もなにも教えてないのに、どうして。
考える暇をあたえることなく、クリストフは話し続ける。
クリストフ「明日の夜だ。城の場所は」
ナターシャ「分かるわ。」
クリストフ「なら良かった。」
そしてまた果物を買って、彼は帰る。
クリストフ「楽しみにしているぞ。ナターシャ」