第36章 束の間の日常
翌朝、多くの兵士達が徹夜した甲斐あって、今回の調査についての報告書が完成したのだった。
調査に参加した兵士達は一同に会議室に集まっていて、一枚ずつ重ねられていく報告書の行方を見守っていた。
ついに最後の一枚が提出され、辞書のような分厚さになった報告書の束をハンジ分隊長が掲げた時には、兵士達の間から歓声が上がったほどだった。それほどまでに今回の調査日程はタイトなものだったのだ。
どの兵士も目元に濃いクマを浮かべて疲れきった顔をしていたが、心は達成感で満たされて清々しい気分に包まれていた。
ハンジ分隊長は報告書を小脇に抱えると、コニーを伴ってさっそくエルヴィン団長のもとへと向かったのだった。部屋を出て行くハンジ分隊長の後ろ姿を私達は見送った。
「みんな、よくやってくれた。ゆっくり休んでくれ」
げっそりした集団の中でも一際、まるでゾンビのような顔色をしたモブリット副長が、先ほどまで分隊長が立っていた壇上に上がって言った。
私達に労いの言葉をかけてくれているが、副長の方こそ早く休んだ方が良さそうだった。副長は実質、研究班の実務的な指示の全てを担ってくれていたので、その疲労は相当なものだろう。