第33章 道標
私と団長は馬に飛び乗ると、一目散に駆け出した。さすが調査兵団の馬と言うべきか。なんて優秀な子達なんだろう。この子達がいてくれて本当に助かった。
「この機を逃すな!!撤退せよ!!」
先頭を走るエルヴィン団長が叫ぶ。
次々と、散開していた兵士たちが集まってきた。その中にエレンとミカサの姿を見つけて、私は表現しようのないほどの安堵を感じた。
やった!作戦は成功したんだ…!!私達はエレンを取り返した!!
だけど…
兵士達を完全に無視してすれ違っていく巨人達を視界の端に捉えながら、私は目の前を走るエルヴィン団長の背中を見つめた。その広い背中の右側にあるべき、逞しい腕が見当たらない。 背中にひるがえる自由の翼は、大量の血で赤く染まっていた。
その無念さに、私は次から次へと溢れ出てくる涙を止めることができないのだった。