第33章 道標
エレンが巨人化して鎧の巨人との肉弾戦にもつれ込んだ直後、超大型巨人はその巨大な拳を兵士達目がけて振り下ろした。
到底、生物とは思えないような巨大な腕が、まるで天変地異の様にして迫ってくる。
「全員ッ、壁から跳べ!!」
ハンジ分隊長の大声に弾かれるようにして、私達は必死で跳んだ。
轟音と共に壁が弾け飛び、瓦礫が弾丸のように降り注ぐ。
その混乱のさなか、超大型巨人の大きな手が伸びてきてユミルと兵士一人をいとも容易く捕まえた。そしてパックリと口を開くと、その中に二人を放り込んでしまったのだ。
バコッと歯列が閉じる音が響く。
「食った!!!」
兵士達の間から悲鳴にも似た叫び声が上がり、全員が恐怖とおぞましさでその場に凍りついた。
…ついさっきまで人間の姿をしていた者が…、仲間を…仲間だった者を食った。
私はゾッとして声も出なかった。先ほど言葉を交わしたベルトルトという少年は、気は弱そうだけど…穏やかで優しそうな子に見えたのに。
あの彼が、こんなことをしたというのか。目の前で見せつけられたけれど、すぐには受け入れられない。頭も心もついていかない。
だけど、ハンジ分隊長の飛ばした激に私達は我にかえった。
「総員戦闘用意!!超大型巨人を仕留めよ!!人類の仇そのものだ、一斉に掛かれ!!」
その場にいた全員が、立体機動で飛び立った。超大型巨人は、先ほどと同じように拳を振り上げて応戦しようとしたが…その動きは驚く程緩慢だった。立体機動で飛び回る私達にまるで追いついていない。
ゆっくりと振り下ろされてくる拳を避けながら私はそう思った。
「今だ、全員で削り取れ!!」
超大型巨人のうなじ目がけて兵士達が突進していく。誰もが「いける」と思った。