第32章 裏切り者達
ライナーとベルトルトが、巨人化した。
すさまじい熱風によって身体が宙を浮き、兵士達は皆吹き飛ばされた。私もゴロゴロと地面を転がったが、運良く壁上固定砲のレールにつかまることができ壁上から落ちることは免れた。
体勢を整えて起き上がった時には、すぐ目の前に2体の巨人の姿があって、その姿は…忘れもしない…5年前に私から家族を奪ったあの巨人達だった。鎧と…超大型巨人…。
鎧の巨人はエレンを掴み上げると、素早い動きで壁を飛び降りた。
「なッ…」
「エレン!!!」
私は反射的に走った。とにかく無我夢中で。
むせ返るような蒸気で視界が悪い。壁の際にへばりついて下を覗き込んだ時、鎧の巨人に身体を鷲掴みにされているエレンの姿が見えた。
辺りには轟音が響いている。すぐ近くにいる兵士の声ですらかき消されてしまいそうだ。それほどまでに騒がしい中で、不思議なことにエレンの声だけははっきりと聞こえた。
「このッ…裏切りもんがああああ!!」
その悲痛な叫びの直後、金色の光の中からエレン巨人が姿を現したのだった。