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【進撃の巨人/リヴァイ】君が描くその先に

第32章  裏切り者達


 私の連れてきた医師の診察の結果、兵長はひどい捻挫を負っていることが分かった。
 怪我の経緯を聞いたら、女型の巨人の手にぶつかったらしい。あの女型と生身でぶつかっていながら骨折していないというのは流石と言うべきだが、それでも酷い怪我であることに違いないので、医師からは絶対安静を言い渡されたのだった。

 私は日々の手当の手順などを教えてもらい、兵長の怪我の手当て役を勝手に買って出たのだった。

「わざわざお前にやらせるほどじゃねぇ。自分で出来る」

「いえ、私にやらせてください。救護班の手伝いで慣れていますから」

「…お前だって忙しいだろう」

 そう言う兵長の声は小さく、遠慮しているようだった。
 確かに、私も決して暇な訳ではない。自分で言うのも何だが、絵画制作や巨人研究、このような状況では救護班の手伝いなど、何かと仕事を任される事が多くてかなり忙しい。

 だけど正直なところ、それほど負担には感じていないのだ。
 自分は兵士としては情けないことに、戦闘力であまり貢献できる方ではない。だけど、戦闘力が低い代わりに、「絵」という武器を持っているし、炊事掃除洗濯などの家事も得意な方である。
 だからせめてそちらの方面では役に立ちたいから、意識して積極的に働いているのだ。
 つくづく思うのだが、私は家庭向きの人間であり、兵士には向いていないのかもしれない。だがそれでも私は兵士でい続けて、巨人の絵を描きたい。

 最初は、「お前の絵は人の役に立つから、描き続けろ」という兄の遺言を守ろうという気持ちの方が強かった。だけど、いつしかその思いは私の心に深く根付いていって「兵団の仲間のために、人類の前進のために役立ちたい」と思うようになった。
 巨人の謎の解明に貢献して、人類が少しでも早く自由を手に入れられるようにしたい。…その目的を達成するために死ななければいけない状況になったとしたら、私は迷わず死ねるだろう。

 大切な人は皆先に逝ってしまったから、私にはもう肉親はいない。誰かを遺していく心配が無いから、こんな風に思えるのかもしれない。

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