第32章 裏切り者達
エルヴィン団長達とエレンの王都招集の日取りが決まるまでの間、調査兵団にはカラネス区内にある兵団施設にて待機するようにとの命令が下ったのだった。
壁外から戻ってきた私達はその足でまっすぐ指定された兵団施設に向かうと、まず負傷者の本格的な手当てに取りかかった。
帰還する道中にできる限りの応急処置はしているものの、それだけでは不十分なのできちんと医師に診てもらわなければならないからだ。
私は新兵時代、駐屯兵団の診療所で手伝いをしていたことがあったので、こういう時は救護班の手伝いに入っている。
救護班の指示に従って負傷者の傷の手当てをして回っていると、まだマントも取っていないリヴァイ兵長がこっそりと声をかけてきた。
「おい…後でいいから、俺のところにも来てくれるか」
「え?…兵長、どこかお怪我されたんですか?!」
「大したことはねぇ。いいか、重症の奴を先に看てやれ。俺はその後でいい」
そう言って兵長は歩いていこうとした。だけど私は、兵長が足を引きずっていることに気がついて、思わず駆け出してしまった。
「兵長っ!!!」
私は兵長の脇の下から潜り込んで、肩を支える体勢を取った。私の方が背は低いけれど、身体を支えることくらいならできる。
突然の私の行動に兵長はびっくりされたようで、切れ長の三白眼の瞳が大きく見開かれていた。
「…びっくりしたじゃねぇか」