第31章 幸せ
その後訪問した、オルオ、エルド、グンタの遺族にも、私は肖像画を渡した。
訃報を知って泣いている遺族を目の前にすると怖気づいてしまう私だったが、その度に兵長が背中を押してくれたので、何とか全部の絵を渡すことが出来た。
皆、ペトラの両親と同様に声を上げて泣いて、その度に私も泣いた。兵長は横に立ってじっと黙っていたけれど、鼻が少し赤くなっていることに私は気付いていたのだった。
帰り道、来た時には持っていた皆の遺品や肖像画が無くなってしまい、私は手持ち無沙汰になって手を揺らした。それはただの荷物の重さだったかもしれないけれど、軽くなった両手がどうしようもなく寂しかったのだ。
隣を歩くリヴァイ兵長も同じ気持ちなのかもしれず、その両手は深くポケットに突っ込まれていて、普段はピシッと伸びている背中も少し丸められていた。そういう仕草をすると、ただでさえ小柄で若く見える兵長は、まるで十代の少年のように見えるのだった。
夕陽を背に受けながら、ポツポツと私達は歩いた。しばらくの間会話は無かったのだが、街を抜けて辺りに人影が無くなった頃、前を歩いていた兵長がチラリとこちらを振り返った。
「ラウラ、ありがとうな」
「え…?」
唐突なその言葉に私は一瞬驚いた後、何に対しての礼なのかと、慌てて考えを巡らせた。遺族への報告に同行したことだろうか?でも、それは私が勝手について来たことだし…その上私は泣きじゃくっていただけで、むしろ面倒をかけてしまった…。