第5章 幼馴染
「画家かぁ。うん、ラウラならきっとなれるよ!
そしたら俺がイーゼルをたくさん作って、お前の絵をいっぱい飾ろうぜ。そんでたくさんの人にお前の絵を見てもらうんだ」
「わぁ、楽しそう!」
「楽しいぞきっと!俺とお前の二人でやるんだ!約束だからな!」
「うん!」
あの時の無邪気な約束は、成長するにつれてどこかに行ってしまったけれど、「画家になりたい」という私の思いだけは、消えることなくずっと傍らにあった。
思えば、物心ついた時から、私の傍には常に絵があった。
父さんが絵を描いている姿をいつも飽きることなく見ていて、3歳くらいの時には自分の身体よりも大きなスケッチブックを持って近所中を歩き回っていたものだ。
父さんがしているのを見て、鉛筆を持ちながら絵の構想を練る真似事をしてみたりした。
とんがった鉛筆を持って、ヨチヨチと歩き回る私のことを、兄さんや母さんが慌てて追いかけて来ていたっけ。
兄さんは、あの時すでに私にとっては「兄さん」になっていたけど、母さんにとってはまだまだ6歳の子どもだったから、ヒヤヒヤも二倍だったと思う。ごめん、母さん。
とにかく、そんな風にして歩き回っていた私のことを、近所の人たちはいつも笑って「小さな画家さん」と呼んでくれた。
そういえばそのくらいの時だ、ライデンと出会ったのも。私は出会った相手の似顔絵を、所構わずに描き始めるとんだ芸術家おチビだったから、初めて遭遇した「自分に背格好の似た生き物」にいたく興味をそそられて、穴があくほど彼の顔を見つめたのだった。
そんな私につられるようにして、ライデンも私の顔をじっと見ていた。