第31章 幸せ
「リヴァイ兵士長殿っ…なぜっ、なぜ娘がこんなに無残な殺され方をしなければならないんですかっ!!あなたはっ、人類最強の兵士ではなかったんですかっ?!あなたがついていながら、なぜ娘がこんなことに…っ」
ブルブルと体を震わせて泣き叫ぶようにして言ったペトラの父に、リヴァイ兵長はもう一度深く頭を下げた。
「誠に…申し訳ありませんでした」
「…っ!!」
兵長を責めてもどうにもならないことくらい、ペトラの父親にも分かっているはずだ。だが、突然娘を失った悲しさは到底すぐに受け入れられるようなものではなく、その受け入れられない思いを誰かにぶつけることでしか発散できないのだろう。
その瞳には深い悲しみと憤りが浮かんでいて、今にも掴みかかってきそうな様子さえ感じさせた。
しかし、ここで意外なことが起こった。声も上げられないほど震えて下を向いていた母親が、真っ赤になった目を上げて、父親の背中に手を添えたのだ。
「お父さん、兵士長さんを責めても…ペトラは帰ってきませんよ。それに、手紙にも書いてあったじゃないですか…彼のもとで働けるのはとても光栄なことだって…だからっ…」
両目からとめどなく涙が溢れてきて、彼女は耐え切れずに両手で顔を覆った。そんな彼女の姿を見て同じく涙を止めることのできない父親であったが、今度は彼が彼女の背中にそっと手を添えたのだった。