第29章 第104期調査兵団
テーブルにはパンやスープ、それに量は少ないけれど、滅多にお目にかかれない肉料理が並んでいた。
「うわぁ、豪勢ですね~!」
私は嬉しくなって、つい子どものように声を上げてしまう。そんな私の横に、いつの間にかエレンが立っていた。
「ラウラさんの分、取り置いておきましたよ」
そう言って彼は、キレイに料理が盛り付けられた取り皿を差し出してきた。
「えっ!わざわざ気にしてくれたの?ありがとうエレン!」
お礼を言うと、エレンは照れくさそうに笑った。その笑顔がすごく可愛くて、私はつい、エレンの頭を撫でてしまう。
「あっはははは!ラウラとエレンは仲良しなんだねぇ~!そうしているとまるで姉弟みたいに見えるよ!可愛い可愛い」
私達の様子を見ていたハンジ分隊長が、心底楽しそうに笑う。手にはぶどう酒の入ったジョッキを持っていて、すっかりご機嫌な様子だった。
「いやぁ、でも入団者が21名もいてくれて本当に良かったよね。しかも南方訓練兵団の成績優秀者上位10名のほとんどが調査兵団を選んでくれたんだよ?大概は憲兵団に行くのに、これは異例中の異例だよ。それに、実はエレンも5位の成績優秀者なんだよね!」
「え!そうなんですか!すごいねエレン!」
思わずエレンの方を見ると、彼は少し頬を染めてやや俯いていた。「ありがとうございます」とポソポソ言うのが聞こえる。
あぁ、もう。これは本格的にマズイかもしれない。エレンの姿が弟のエリクに重なって見えて、可愛くて仕方がない。
でも、エリクに似ているからということもあるけれど、単純にエレンの行動の一つ一つがいじらしすぎて困る。
このまま彼を見ていたら、頭をわしゃわしゃと撫で回したい衝動を抑えきれなくなりそうだったので、私はあえて視線をそらして、新兵達の座るテーブルに目を向けた。