第26章 兵長のおまじない
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朝がやって来た。今日も快晴で、壁外調査をするにはもってこいの日和だ。
そういえば、壁外調査の時って晴れの日が多いような気がする。…きっとエルヴィン団長は晴れ男なんだろうな。
整列の号令が響く中、私達はハンジ分隊長の後ろに並んだ。分隊長の隣にはリヴァイ兵長の姿があって、普段通りの仏頂面だった。
5年前の超大型巨人の襲撃以降、巨人を恐れずに壁外への進出を試みる調査兵団に、以前の評判からは考えられないほど希望と資金が集まっていて、調査兵団は恐らく過去最高に人も資金も潤沢な状態だった。
沿道には多くの人達がつめかけて、壁外へと出発する調査兵団を一目見ようとひしめき合っている。
その中には、兵士らしき者の姿もチラホラと見られた。年の頃から言って、恐らく訓練兵だろう。
「オイ…見ろ!」
人ごみの中に立っていた、こぼれそうに大きな目をした少年が興奮した声を上げる。
「ミカサ!アルミン!ほらあそこだ!」
「えっ、どこ?!エレン」
「人類最強の兵士、リヴァイ兵士長だ!!」
そう言って少年は指を差した。
その先にいたのはリヴァイ兵長であり、兵長はチラリと少年の方を見ると、ただでさえ深い眉間のシワをさらに寄せた。