第23章 成果
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と、ラウラが感じたのが数時間前の事だ。
「我を失うほど巨人に熱中しない」というラウラの決意も虚しく、巨人との戦闘にもつれこんでから数分、すっかりラウラはスイッチが入ってしまっていた。
同じくスイッチの入ったハンジが叫ぶ。
「ラウラ~!!あの子もよく観察しておいてね!!ほら、あの笑顔の可愛い子だよ~!!」
「了解ですっ!!」
「分隊長っ、ラウラっ!!戦闘に集中してくださいっ!!あんたらホントに死にますよ?!」
それをモブリットが必死の形相で諌めるが、二人の耳には届かない。
こんな事を、実は壁外調査の度に繰り返しているのだ。
壁を出発する前にラウラ自身が懸念していた通り、ラウラは巨人を見ると、その観察に夢中になってしまう。
いつもこうなる訳ではないが、奇行種が相手になるとほぼ100%の確率でスイッチが入ってしまう。
ちなみに通常種が相手の時はまだ冷静さを保っていられるので、ラウラが討伐補佐をしているのはこういう戦闘の時である。
そして「スイッチが入る」とはどのような状態になるのかと言うと、端的に言うと視界に巨人の姿しか映らなくなり、さらに進行すると何も耳に届かなくなるのだ。
ラウラは巨人の動きを一つも見逃さんとして、もともと大きい瞳をさらに見開いて、食い入るように巨人を見つめるのだった。