第22章 息抜き
「うまい」
二つ目のサンドイッチに口をつけた兵長が言う。
私は呆気に取られていたけれど、その一言で意識を取り戻した。
「良かったです!」
自分の作ったものを誰かが美味しいと言って食べてくれる。それはとても嬉しいことだ。
食事当番で料理はしているけれど、特定の誰かのために作っている訳ではないから、当然「美味しかった」なんて言ってもらえることはない。
それに、嬉しいのはそれだけじゃない。
(人前で食べないって仰っていたのに)
私の表情から考えていることを読み取ったのだろう。兵長が言った。
「…お前の前でだったら食う。また作ってくれるか?」
「は、はいっ!もちろんですっ!」
私はとても嬉しかった。
兵長はいつも私のことを気にかけて支えてくれている。ハンジ分隊長やエルヴィン団長が与えてくれる仕事を私が何とかこなせているのは、そうやって兵長が助けてくれているからだ。
いつもいつもお世話になるばかりで何も恩返しができていなかったから、こんな些細な事だけど、お役に立てたのならそれはとても嬉しい。
私は嬉しくてニコニコと笑い、兵長はまた次のサンドイッチを手に取った。
「お前、今、楽しく過ごせているか?」
「はい!とても充実しています」
「そうか…ならいい」
フッと、今度こそ兵長は間違いなく笑ったのだった。