第20章 阿呆
「わ、私も見ました!やっぱりラウラさんは、すごいですね!
訓練兵の時に貸してくれたノートもすごかったけど、あの頃よりもっともっとすごいです!」
すごいすごいと連発しているミアの顔を、私は思わず見つめてしまった。
訓練兵時代のノート?あぁ、もしかして、対人格闘術についてまとめたノートのことを言っているのかな?そう言えば、あのノートを貸してあげたのはミアだったっけ。
「実は俺も、あのノート見せてもらいました!勝手に見てごめんなさい…でも、本当にすごかった!俺、あのノートに描かれている絵を見て、感動したんです!」
また、ヘルゲが言った。彼は、どちらかと言うと活発な男の子だから、話す時はいつも大きな声でハキハキとしているけど、今日は特に元気がいいようだ。
それにしても…二人は一体どうして急に話しかけてきたんだろうか?教本を見てくれたようだけど、私の絵を見た感想を言ってくれているんだよね…?
でもどうしてだろう?こんなこと初めてだ。
私が思わず二人の顔を見つめ返すと、それに気がついたミアは少し慌てたようにキョロキョロと顔を振って、それから何かを決心したようにまっすぐに私の目を見つめてきた。
「私こんなチビだから、対人格闘術が苦手だったんです。だから絶対に単位落とすって思ってたんですけど、ラウラさんのノートを見せてもらったおかげで、コツとかポイントがよく分かって、だから試験に合格することができたんだと思います。
ラウラさんのおかげです。本当に、ありがとうございました!そして…お礼を言うのにこんなに遅くなってしまって、ごめんなさい!」
ミアの可愛らしい声が耳の奥に響いて、それと同時にピシッと私の中の何かにヒビが入るような音が聞こえた。