《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第2章 サギ師のあなたに脱がされて
《ゆめside》
「あーあ、けっきょく渡せなかったな……」
鞄の中の手つかずのプレゼント。あの場で渡す勇気なんてなかった。
『お誕生日おめでとうございます』
『プレゼントを持ってきました』
『オシャレしたのも霊幻さんのためです』
素直に言えたらどんなにいいだろう。
ちょっと霊感があっても恋にはまったく役立たない。私って本当にだめだな……。
明るいショーウィンドウを眺めながら、トボトボと駅に向かって歩く。
10月に入って、どの店もハロウィンモード一色だ。
私はふと雑貨屋の前で足を止めた。ハロウィングッズが店先に出ている。なんとなく惹かれて、魔女の帽子を頭に乗っけてみる。
「う〜ん……ちょっと違うな……」
窓ガラスに映った自分を眺め、今度は横にあったゾンビの面をつけてみた。
「うん、魔女よりはこっちだな」
ガラスの中で頷くゾンビ。
次のかぼちゃの面に手を伸ばそうとしたとき、
「ゆめ!!」
うしろから名前を呼ばれた。
「え?」
振り向いた瞬間、ぶふっと吹き出す音。
「おまっ! なんだよそれ!! ひでぇな!! ギャハハハハ!!」
霊幻さん……。
振り返ったゾンビを見て大笑いしていたのは、紛れもなく私の好きな人だった。
「そ、そんなに笑わないでくださいよ! もうっ!」
ゾンビ面を戻す。
「いや、だって店先で一人で何やってんだよ。シュールすぎるだろ」
も〜、まだ笑ってるし!
霊幻さんは笑いすぎたのか涙を拭くと、私の鞄を拾った。
「ほら、帰るぞ」
「え?」
「祝ってくれるんだろ? 俺の誕生日」
「っ!」
なんで知ってるの!?
霊幻さんは歩きだした。
「それともゾンビのお面つけて祝ってくれんのか?」
「まだ言ってるんですか! もう! ちょっとつけてみただけなのに!」