第9章 つんでれアクアマリン【A×O】
朝から撮影があってスタジオに詰めていた俺は、夜になって解放され、その脚て潤を迎えに行った。
家の前に着いたってLINEすると潤は直ぐに出てきて車の助手席に座った。
「行くぞ」
そうひと言だけ言うと、
「お願いします…」
潤は小声でそう言った。
『アクアマリン』に着いたのは閉店後。
翔ちゃんが出迎えてくれた。
「ごめんね~、わざわざ時間とってもらって」
「いや、入って」
歩道にいた女子大生らしき集団が、俺と潤の存在に気付き騒めいた。
翔ちゃんは俺の背中を押して急いで店の中に入れてくれた。
店の奥に入って、『StaffOnly』の部屋に通されると、そこには、二宮くんとなぜか智くんが並んで座っていた。
こんな場面で彼と再会したこと、喜ぶべきじゃないよな…
俺から切り出そうと口を開きかけたその時、
「二宮くん、ごめんなさい!」
潤がそう言って身体を90度に折りたたんで頭を下げた。
潤…おまえ……
「俺、いい気になってたんだ…俺が誘えば断る奴なんかいないって…
俺…二宮くんが、その…初めてだったって知って…
申し訳なくて…」
項垂れる潤を見て、ちゃんと反省してたんだって、この瞬間に初めて知った。だから俺も…
「ニノちゃん、本当にごめんなさい!こんなことしたヤツを擁護するのもどうかと思うけど…ホントはこいつ、真面目で、一生懸命なやつなんだ、だから…」
「もう、いいよ…分かったから…」
俺の言葉を遮って、そう言った二宮くんは、思いがけず穏やかな表情で…
そんな彼に、潤は驚いた顔をしている。
「仕事を休んだのは、ケツが痛かったからで…
もう治ったしさ。
潤くん、よかったらまた指名してよ。」
「二宮…くん…」
「今よりカッコ良くしてあげる自信、あるからさ」
女の子みたいに可愛い顔をした彼の、芯の強さと、懐のデカさを知った気がした。
ここで初めて気になったのは、何も言わずに潤を睨んでいた智くんだった。