第9章 つんでれアクアマリン【A×O】
俺も…
身体が震えるのを止められなくて。
それでも
それは俺の役目だろうと強く思ったから
翔さんの目を見て
任せてほしいというつもりで深く頷いたとき
ガチャリ……
ドアが開いて
ゆらりと松本潤が出てきた。
真ん前にいた俺に別段驚くでもなく
むしろ邪魔くせぇなというような
明らかに不愉快そうな顔をして横をすり抜けていく。
その…大きく開いたドアの向こう…
煌々と明るく照らされたライトの下。
カット用の椅子に沈み込む二宮さんの姿に
…息を飲んだ。
走り寄って
大きく開かされて肘掛に掛けさせられてる脚を
そっと下ろしてやって
棚から取ったタオルを
血の滲むソコに優しく押し当ててやると
抜け殻のようだった二宮さんが
急に暴れ出した。
「や、やだっ…見るなっ、見るなぁっっ!」
俺は思わずその震える身体を包み込んで
「だいじょぶ!だいじょぶだからっ…」
ギュッと抱きしめてやった。
「いやだ…っ…どけっ、放せよっ…」
「二宮さん、黙って……泣いて…いいから…っ…」
尚も暴れる身体を
ギュッとギュッときつく抱きしめたら。
「…ふ、くっ…ふぅっ……う、ぁぁっ……」
俺の胸のところのシャツを
ギュッと握りしめながら
二宮さんは…泣いた。
泣いて…泣いて………
それからまた…更に泣いた。
そんで…ようやく泣き止んだあとは。
俺がそっと後処理をしてやってる間
黙って唇を噛みしめながら
…一言も声を漏らさなかった。
遠くで翔さんと松本潤が
少し言い合っている声を聞きながら
俺もまた…
一言も言葉を発することなく
傷ついた身体を黙って手当てした。
松本潤がウチの店を
いわゆる『ソレができる店』だと思い込んでいた…
という話をしに
翔さんがVIProomに戻ってきたのは
真夜中の1時になろうかという時刻だった。