第9章 つんでれアクアマリン【A×O】
「じゃ、じゃあ…そういうことで。
ちゃんと準備、しとけよ~?」
翔さんはそう言ってから扉を閉めつつ
俺にしか見えない角度で
ドアの陰からパチンと小さなウインクを飛ばしてきた。
だから…俺も小さな会釈で感謝を伝えた。
翔さんは時々こうやって
有名人のカットを『いい経験になるから』と
俺に持ってきてくれるんだけど…
そういうのが好きじゃない俺は
何やかやと理由をつけて
毎回やんわりと断っている。
ちゃんとした技術が
身についているならまだしも…
そういうめんどくさいの
俺には無理。
もっと地道に一歩一歩…
自分の手で階段を上っていきたいんだ。
「っしゃ~…有名人ゲットォ~(* ̄∇ ̄)♪」
身体中から音符を出してる感じの
踊り出しそうな二宮さんは
椅子に座りながら嬉しそうにゲーム機を掴む。
「悪いなぁ、大野…いつも譲ってもらって♪」
感謝の気持ちなんて
これっぽっちも持ってないだろうに
「お前が無欲なヤツで助かるよ。
その調子で相葉さんも俺に譲れよな~♪」
ペラペラと動く口をぼんやり見つめながら。
もしかしてこれも
先を見据えた何かの伏線なのかとか
まぁもしそうだとしても
俺にはよくわかんねぇから関係ねーかとか
どうでもいいことを
なんとなくゆらゆらと考えつつ
一刻も早くこの部屋から出て
翔さんの笑顔を見に行こうと思って
残りのカレーパンを
一気に口に捩じ込んだ。
夜になって
スタッフが後片付けを始めた9時すぎ。
俳優の松本潤がやってきた。
コイツは確か…
相葉雅紀と同じ事務所で年齢も近い感じ。
でも相葉雅紀がお茶の間に親しみやすい
明るい天然キャラなのに対して
コイツはどちらかと言えば
クールでカッコいい二枚目俳優。
相葉雅紀みたいなワサワサしたのも嫌だけど
こういうスター気取りのナルシストは
…もっと嫌だ。