第1章 【番外編】マツノトクエスト 序章
「んーそうかなぁ? いつのもクソださい姉さんの恰好も似合ってるけどぉ、こっちも似合ってるよ!」
松野家五男、松野十四松。
目印は黄色いパーカーにダボダボの袖、半ズボン。
天然か計算なのかはわからないが立ち回りが破天荒、ナス子をいつも翻弄させる男。
十四松と言うジャンルは兄弟達も未だわかってはいないのにナス子にもそれはわかるハズもなく良く振り回されもするが、基本ポジティブでとにかく明るく空気を読んでいないようで意外と読む。
いつも笑顔で懐いてくれる五男は特別ワンコのように可愛がってしまう癖があり、他の六つ子達にブーブー文句言われる事もしょっちゅうだ。
誰かを元気づけるのがとても上手。
「そうだよ、一松兄さん! ナス子姉がお洒落してくるなんて奇跡にも近い行為なんだしここは少しだけでも褒めてあげないと成長しないよぉ? あ、写真撮っとこ」
パシャリと言う音がして身体全体が映るようにナス子の写真が撮られる。
それだけ普段お洒落をする事のない姉にトド松は少しご満悦のようだ。
松野家末弟、松野トド松。
幼馴染の中で一番辛口でドライモンスター、他人に興味は示さないが日頃一緒にいる事の多いナス子をイメチェンさせるべく毎度口をすっぱくしてお洒落しろだの化粧しろだのと煩くしてくる。
最近ではスキンケアについて厳しい。
半ば末弟のしつこさに呆れてしまうが、末弟のあざとく可愛いお願いと言う言葉には魔法がかかってしまうのか、つい騙されてお願いを聞いてしまう事も多い。
「お前らは……もう少し私に優しい言葉とかかけようと思わない訳? 仮にも幼馴染でお姉ちゃんだよ、私は!」
「へいへい。んでぇ、こんな朝からなんの用だよ? 俺今から新台入荷もあって一勝負行くつもりなんだけどぉ?」
腰に手をあててナス子に顔を近づけ邪魔そうに眼を据わらせて覗き込んで来るおそ松。
兄弟全員が話し終えると、早速文句を言ってやろうとして口が開いていたが、本題を聞かれてムッとした気持ちも消える。
今度こそ自分が喋る番だと嬉々としてナス子は口端をニっと上げた。