第32章 第三十一話
不穏に話し始めるおじさんの前に手を伸ばし、その話を止めにかかるおそ松とトド松。
「二人ともやめなさい!話が進まないでしょう、おじさん、話を続けて下さい」
「その名も【籠りの館】。行ったは最後、帰ってきたものはいないと言う曰くつきの建物だ」
籠りの館、今泊ってる宿のクエストでも聞いた事ない名前だな。
ただおじさんの表情を見るからに冗談を言っているようには見えないので、嘘ではないかもしれない。
「でもその籠りの館がどうして俺達が先に進むのに必要な情報かもしれないんだ?」
うんうん、カラ松もそう言ってるけど私も同じ事思った。
だって避けて通れるなら避けちゃえばいいもんね。
「どうせこの村にずっと滞在するつもりじゃないだろ?そうすると、嫌でもその館の前を通る事になるからな。それと、理由はわからねぇが、その館には不思議と独り身の奴が惹きつけられるらしい」
あぁ、なるほど。
私達って新品で童貞の勇者と純潔の乙女のパーティって有名だったもんね。
乾いた笑いしか出てこないけど、避けられないクエストの可能性が高そう。
「もしその館に呼ばれる事があったら、決して気を許すな。それが俺が言える一つの情報だ」
「情報それだけ?少なくない?!」
「そんな事言われてもな、俺も近づく事をしないからそれくらいしかわからないんだ、申し訳ねぇな勇者様」
クエスト進行の情報なんてそんなもんかなぁ、ハタ坊が作ったゲームだし、気の利いたものはなさそうだ。
思えば猫が持ってった玉がなくても一松と十四松は見つけられるのかな。
不安は残るところだけど、やっと得た新たな情報だ。
もしかしたら何か手がかりが見つかるかもしれない。
こうして私達は新たな情報を得て、賭博場を後にするのだった。