第29章 【番外編】マツノトクエスト 第二十八話
「ちょっとぉ、おそ松兄さんいつまでナス子姉を抱きしめてるつもり? それに色々聞きたいんだけど、宴会はどうなったの?」
トド松がおそ松の肩を押し、やっと引っぺがしてもらい大きく呼吸が出来た。
サンキューだぜ。
「ああ、お前らが頑張ってくれたお陰で先に酒飲んだ盗賊とか飯食ったヤツらは皆寝ちゃってさ~! 俺がイタズラしてもな~んの反応もナシ!! やっぱ俺って勇者だから、運の神様も味方してくれてんのかなぁ~なははははは!!」
馬鹿な笑い声が聞こえると、途端さっきまでの緊迫した空気も薄れて身体の力が抜けていく気がする。
他の弟達も同じようで仕方ないなぁと言う感じの笑みを漏らした。
「悪戯って何してんだよ! そんな事して起きたらどうするつもりだった訳、おそ松兄さん」
「相変わらず煩せぇなぁ、チョロ松は! ……ってそうじゃない! 魔王の幹部ってお前だったの?!」
一歩遅れたツッコミがおそ松から入るのだが、おそ松は気づいていない。
チョロ松が、おそ松兄さんと呼んだ事に。
色々ビックリする事もあるし、突っ込む所が多すぎて聞き流しちゃうのも仕方ないけどね。
「まさか睡眠薬作戦がこうも上手くいくとはな」
「その、なんだっけ? 密偵の人? その人はどこに行ったの?」
チョロ松の記憶が戻った事も早く説明したいけど、まず先にコチラから始末しなくてはならない。
密偵さんの事、そして私達は今から盗賊を殲滅しなくてはならない訳だし。
「あぁ、密偵の人は全員眠ったのを見届けて後は俺達に任せるつって国に報告に行くって言ってたよ?」
「そっかぁ、退治するのは私達の仕事だしね。起きちゃう前に討伐しちゃわないと……」
おそ松も、他の皆も沢山話したい事聞きたい事はあるだろう。
でも先にこっちを片付けないとならないので、私達はチョロ松に討伐クエストの話だけをして納得してもらい、宴会場へと向かって行った。