第29章 【番外編】マツノトクエスト 第二十八話
「どこに行っちゃったんだろう? 先に宴会場に行ってるのかな」
うーんと腕を組んで考えると、そう言えばと言うようにトド松が発言する。
「ねぇ、おそ松兄さんは? 姿が見えないけど死んじゃった?」
「仮にも血を分けた兄弟を勝手に殺すな!」
「わぁ、チョロ松兄さんの突っ込みがなんだか懐かしいぃ~」
長男がいないと言うのにこの和んだ空気はなんだろう。
おそ松、お前の日頃の行いはここでも健在だぞ。
「おそ松は、上手く盗賊達に取り入って先に中に入ってるよ」
「何?! お前を、ナス子を一人ここに残して一人だけ先に行ったのか!!」
「いたっ、ちょ、カラ松! 肩っ、力強いよ!!」
瞬間的にカラ松にガシリと肩を掴まれてあまりの力の強さに身じろぐ。
心配してくれてるのもわかるし……ちょっとおそ松に怒ってるなこれは、震える手でカラ松の心が伝わる。
「ち、違うよ! おそ松はちゃんと心配してくれて私の事を助けてくれようとしたんだけど、変に無理やり動いたらバレると思って私が先に行ってって言ったの。だからおそ松は全く悪い事はしてないからね? だからカラ松、後でおそ松に怒っちゃだめだよ?」
「………」
あまり見る事のない、カラ松の目に移る怒り。
真剣すぎる表情。
違う意味でドキリとしてなんとか宥めなければと説得する。
こっちが言っても中々腑に落ちないみたい。
「しかし……男としてどうなんだ、仮に相手がナス子、だとしても一人こんな部屋に残されて戦っていた訳だろう?」
「大丈夫です! そこはほら、ハリセンもあるし!!」
「僕が助けなければ危なかったけどね」
「ぐ、その節はありがとうございますチョロ松先生」
「うん、素直でよろしい」
ドヤ顔ムカツクぅ~。
でも助けてくれたのは本当だし、その時はまだ記憶もなかった訳で……やっぱりパーティメンバーとして心配してくれたんだなと思うと裏切った訳ではないのかな。