第27章 【番外編】マツノトクエスト 第二十六話
黒い皮の眼帯、猟師にいるような立派な黒い口髭を周りに生やして、金色のバンダナを巻き付けている人物を目の前に私達は緊張した面持ちで立っていた。
「と、頭領! コイツ新入りなんです。宴の前で悪いとは思ったんですが一応紹介しておこうかなぁって……あはは」
「おう、よく来たな。人数が増えるのは大歓迎だ! 俺らの仲間として精々役に立ってくれよ新入り」
頭領プラス10人程の盗賊を前に、威圧感に圧倒されるおそ松がさっきの調子は失くし汗を垂らしながらも私を紹介する。
正直な話、他の盗賊の顔の見分けは全くつかない。
モブだもんなぁ、なんて考えちゃうけど頭領の顔だけはちゃんと覚えなくちゃ。
「初めまして頭領! 俺……ええっと」
あれ? 私名前なんて名乗ればいいんだ。
さっき名前決めてたかな?わかんなくなってきた!!
普通に名前言ったら女ってバレそうな気がするし。
「あ、ああ! コイツはえっと、ま……松田ブライアン!! って言うんスよぉ。変な名前ッスよねー!! 馬っぽいっていうかぁ」
おい、そこ!おそ松このやろう。
それマジ馬だから、お前がいつも応援してるヤツだから! 馬の名前を私につけるとは何事だ。
だがもう名乗られてしまったので仕方ない、変に疑われるのは避けたい為、私の名前は今からブライアンだ。
「はい! 俺、ぶぶぶ、ブライアンって言います!! 宜しくおねがいシャース!」
「ぶふっ」
こっそり笑ってるし! クソ、おそ松踏んずけたい。
「だっはっはっは、んな緊張するこたぁねぇぜ! 一度仲間になっちまったら俺らは今日から家族も同然ってもんだ。楽に楽しもうぜブライアンよぉ」
頭領は宴の前にも既に酒を煽っていて、鼻を赤くしてコチラに手を振る。
他の盗賊は私を見たまま黙っているのでそれはそれで怖い。
「へ、へい! ありがとうございますっ」
「それにしてもお前さん小せぇなぁ? いくつだ?」
「えーっと、もう成人越えはしてるっス!」
「ほぉ、んな女みたいなガキみたいな顔してるがもう立派な男ってかぁ! まぁ、死なねぇように気を付けな! 宴の後は特にな……」
よし、騙せた……というか宴の後ってなに?
どういう事だろうか、宴の後に何かあると言っているようなものだ。
私とおそ松はコッソリ視線を合わせたがわからず首を傾げる。
