第13章 【番外編】マツノトクエスト 第十二章
「所でさ、誰か、火……持ってるの?」
「アッ」
枝を両手に抱えながらチョロ松が私とトド松に言うのだが、二人共ハッとして顔を合わせた。
火なんて持ってないし、ここは原始的に火おこしで点けるか?
「はぁ、そんな事だろうと思ったよ。このパーティは脳筋が多いのかな? 乙女もどちらかと言えば召喚使う癖にすぐ気絶してたしどちらかと言うと体力派なんじゃないの?」
いやぁ、突っ込みがまた一人増えると助かりますな。
だがまた突っ込まれてるのは私だ。
「乙女だからって頭がいいとは限らないでしょ? ったく~、トド松もチョロ松も二人して似たような事言わないでくれないかな!」
「「え、だって本当の事でしょ」」
【 ナス子は ハリセン を構える 】
「あ、あー!! ちょ、ちょっとぼくおそ松とカラ松に火持ってないか聞いてくるねっ、うんうんうん━━━━━━━じゃっ」
【 トド松 は 逃げて しまった 】
「なんと逃げ足の速い!!」
足の速さなら多分チョロ松の方が上そうではあるけど、トド松は逃げるのが上手い。
チョロ松はハリセン攻撃を受け止めようと本を自分の顔の前に掲げていた。
「ナニしてんのさ、殴らないって! 冗談冗談!!」
「お前の場合冗談なのか本気なのかわからないから怖いんだよ……実際それでさっき殴られた訳だし」
息を漏らし、安心して本を下ろすチョロ松。
その口調を聞いていると、今朝見た夢を少し思い出してしまう。
なんだか喋り方がいつもの私に接して来ている態度と同じだからか、少し嬉しくなってきてしまった。
チョロ松って女に弱いんじゃなくて可愛い女に弱いんだな。
という事は私は全く乙女的にみられていないと、ヨシ。
いいのかわからないけど、ヨシ。
「当たり前の事かもしれないけどさ、チョロ松って私の事知らないよね?」
火はないが、一応念の為に拾った枝を掘った場所にセットしていく私達。
「うん? 知らないって何が? ナス子が伝説の聖なる乙女で純潔って事は知ってるけど」
「だよねぇ、他にはわかんないよねぇ」
「うーん、何か引っかかる事でもあるの?」
さすがだチョロ松。
枝を置きながら少し心配そうなへの字口でコチラを見て来る。