第38章 妬かれる幸せ*氷室*
放課後になり、日直のお仕事である日誌と黒板掃除を急いで終わらせた。
ただ面倒なのは、日誌と6時間目に皆から集めたノートを先生のところまで持っていかないといけない。
職員室に寄ると遠回りになっちゃう。
憂鬱な気持ちを抑えつつ、ノートを手に取ろうとした時、同じ日直の彼が制した。
「お前、彼氏待たせてるんじゃねぇの?これ俺が持って行ってやろうか?」
どうやら昼休みの私たちの話が耳に届いていたようで、素敵な提案を持ちかけてくれた。
「…え!いいの?」
「今度ジュース1本奢りでどうだ?」
「うぅ…背に腹は代えられない!お願いします!」
ジュース1本で少しでも早く辰也のところに行けるならお安いもの。
「…お、彼氏迎えに来てるぞ。あれだろ?噂のイケメン。」
その声と同時に教室の入口を見ると、さらりと綺麗な黒髪をなびかせて辰也が立っていた。
引き寄せられるように辰也の所に足が向いた。
「辰也!あれ?私迎えに行くって言ったよ?」
「に迎えに来させるなんて、そんなこと出来ないからね。そろそろ終わるかと思って。」
言葉を交わす私たちを横目にノートと日誌を持った彼が、別の扉から出て行こうとした。
「、俺行くわ。じゃあな。」
「うん、ありがとう!また明日ね。」
日直の彼の厚意にすっかり甘えて一息ついて、「帰ろうか」と辰也の方を向くと、辰也はいつもの優しい笑顔ではなく、眉を寄せていた。