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黒子のバスケ*Short Stories3

第38章 妬かれる幸せ*氷室*


体育館で部活の準備をしながら、ちらちら横目で入口の方に目線を移す。

早く来ないかな。まだかな。

今日は朝練から一回も会えなかったから、より一層待ち遠しい。

重い扉が開かれる低い音がして、条件反射のようにそちらを向けば、彼が紫原くんと一緒に入ってきた。

視線が重なると、彼はにこっと優しい笑顔を向けてくれた。

「、これ俺が運ぶよ。貸して。」

荷物を置くとすぐに私のところに来てくれて、倉庫から出そうとしていたボールが入った重いかごを押してくれた。

「ありがとう、辰也。」

「どういたしまして。可愛い彼女の役に立てるなら光栄だよ。」

「だから…何で辰也はそんな恥ずかしいこと涼しい顔して言うの…。」

「俺は嘘は言わないよ?」

口元に笑みを浮かべて、ふわりと私の頭を撫でて辰也は行ってしまった。

言葉を交わせただけでこんなにも嬉しい気持ちになるなんて。

前は朝から夜までずっと一緒だったからわからなかった。

春は大きく環境が変わる季節。

1ヶ月経って少しずつ慣れてきたけど、やっぱり去年を思い出すと寂しいもの。

辰也とクラスが離れてしまって、しかも校舎が違うから中々会えなくなった。

前にこのことを辰也に伝えてみたら、「そうだね。でも部活で会えるから、頑張ろうな。」なんて、またしても涼しい顔して言っていた。

辰也にとっては何てことないのかな。

私の「好き」が大きすぎるからかな。

格好いい彼氏を持つと、結構不安なんですよ?
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