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黒子のバスケ*Short Stories3

第37章 デレたっていいじゃない*高尾*


ずるい。

そんな風に言われてしまったら、また胸がぎゅっとする。

頬が赤く染まっていくのに気付かれたくなくて、夢中でアイスを頬張った。

アイスを食べ終わると、言葉通り和成の隣に静かに腰掛けた。

「相変わらず甘えるの下手な。」

そう言うと、私の肩をぐっと引き寄せ自分の方へもたせかけた。

触れ合う身体から伝わる体温が心地よくて、力を抜いて自分からも和成にもたれかかった。

「…私甘えたいって言ってないよ?」

「あのね、どれだけ一緒にいると思ってんの。顔見ればわかるっつーの。」

何で言葉にしなくても、顔に出さなくても、全て伝わってしまうんだろう。

「今、何でわかるんだろうって思ってるっしょ?」

エスパーかと思うくらい和成は私が考えていることを当ててくる。

顔を見て読まれてると思って、私は両手で顔を隠した。

暗くなった視界の中でふと思う。

じゃあ思っていることを口にしてみれば、もっと気持ちは伝わるんじゃない?

お互い別々の大学に行って、慌ただしい新生活が始まって、今日は久しぶりにゆっくり二人で過ごせてる。

毎日一緒にいた高校生の時より、ずっと二人でいられる時間は減ってしまう。

だったら二人の時は素直でいよう。

「…ちゃん!?」

和成が驚くのも無理はない。

だって私から抱きつくことは数える程度しかないから。

「会いたかったの。…和成に会えないの寂しいから。」

首元に顔を埋めていると、よしよしと宥めるように優しく和成の手が私の頭を撫でた。

和成の顔を覗き込もうとすると、頭をぐっと抑えられて動けない。

「…ちょっと待って。今、俺の顔やべぇから。見ないで!」

「やだっ。」

力いっぱい手を振り切れば、目に飛び込んだのは頬を赤くして焦った様子の和成だった。

「あー…もう!」

言葉と同時に腕に力がこめられて、至近距離で視線が重なった。

「ちゃん、それ心臓に悪いから…。もっと小出しにして!」

「無理だよ…。今だって結構勇気出したんだから。」

顔を真っ赤にして、照れくさそうに笑う和成なんて滅多に見られるものじゃない。

離れてしまったからこそ、こんな何気ない時間も大切にしなくちゃ。

「和成。」

「ん?」

「大好き。」

「何!?ちゃん、今日デレ多すぎっしょ!」
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