第37章 デレたっていいじゃない*高尾*
ずるい。
そんな風に言われてしまったら、また胸がぎゅっとする。
頬が赤く染まっていくのに気付かれたくなくて、夢中でアイスを頬張った。
アイスを食べ終わると、言葉通り和成の隣に静かに腰掛けた。
「相変わらず甘えるの下手な。」
そう言うと、私の肩をぐっと引き寄せ自分の方へもたせかけた。
触れ合う身体から伝わる体温が心地よくて、力を抜いて自分からも和成にもたれかかった。
「…私甘えたいって言ってないよ?」
「あのね、どれだけ一緒にいると思ってんの。顔見ればわかるっつーの。」
何で言葉にしなくても、顔に出さなくても、全て伝わってしまうんだろう。
「今、何でわかるんだろうって思ってるっしょ?」
エスパーかと思うくらい和成は私が考えていることを当ててくる。
顔を見て読まれてると思って、私は両手で顔を隠した。
暗くなった視界の中でふと思う。
じゃあ思っていることを口にしてみれば、もっと気持ちは伝わるんじゃない?
お互い別々の大学に行って、慌ただしい新生活が始まって、今日は久しぶりにゆっくり二人で過ごせてる。
毎日一緒にいた高校生の時より、ずっと二人でいられる時間は減ってしまう。
だったら二人の時は素直でいよう。
「…ちゃん!?」
和成が驚くのも無理はない。
だって私から抱きつくことは数える程度しかないから。
「会いたかったの。…和成に会えないの寂しいから。」
首元に顔を埋めていると、よしよしと宥めるように優しく和成の手が私の頭を撫でた。
和成の顔を覗き込もうとすると、頭をぐっと抑えられて動けない。
「…ちょっと待って。今、俺の顔やべぇから。見ないで!」
「やだっ。」
力いっぱい手を振り切れば、目に飛び込んだのは頬を赤くして焦った様子の和成だった。
「あー…もう!」
言葉と同時に腕に力がこめられて、至近距離で視線が重なった。
「ちゃん、それ心臓に悪いから…。もっと小出しにして!」
「無理だよ…。今だって結構勇気出したんだから。」
顔を真っ赤にして、照れくさそうに笑う和成なんて滅多に見られるものじゃない。
離れてしまったからこそ、こんな何気ない時間も大切にしなくちゃ。
「和成。」
「ん?」
「大好き。」
「何!?ちゃん、今日デレ多すぎっしょ!」