【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.
第5章 On ne vit que deux fois.
――ああ、この人を守る銃でありたい。
かつて自分は祖国を守るべく立ち上がった人の手に乗って戦った。
けれど、今は違う。
ハッキリと、帝国軍だとかレジスタンスだとか関係なく、この人の為に。
このたった一人の命と共に在りたいと願ってしまった。
勿論レジスタンスがどうでもいいわけじゃないけど、彼女を守りたい。
彼女の為に戦いたい。彼女の隣に居たい。
力がいる。彼女を守る力が。
『絶対高貴』――?
でも、俺は……。
「マスター」
「シャルル、シャルル、シャルル」
力強く抱き締めてくるにまだ体が震える。
どうしたらいい?
俺には何が出来る?
絶対高貴がなくても、命を散らして戦わなくても彼女の隣に居られる方法。
俺に出来る事を探さなきゃ。
マスターと一緒にいたい。
マスターの為に働きたい。
「シャルル」
涙を零して俺を呼ぶマスターを強く抱き締めて、暫くそのまま体を寄せあった。