第12章 S&N 2
道を歩いていたところ、居眠り運転の車にはねられたらしい
奇跡的に怪我は軽い打ち身と擦り傷程度で済んだけれど、意識が戻らないそうで
頭をひどく打ったということはないらしいので原因が分からず、とにかく目が覚めるのを待つしかない
静かに眠り続けている陶器のように白い顔を見つめていると、このまま目覚めなかったらどうしようなんて悪い想像ばかりが働いて
どれだけ束縛が激しくても、俺にとってこいつは無くてはならない存在なんだと改めて思い知った
倒れた日から3日、ようやく和は目を開いてくれた
いつものようにベッドの側の椅子に座って見つめていたときだった
僅かに瞼が動いた気がして思わず呼び掛けると、和はゆっくりと目を開けた
「和!良かった……」
「……誰……?」
「え?」
「……ここ、どこ?」
「病院だよ。お前は事故に遭ったんだ」
「……そう……あなたは?」
和は記憶を失っていた
自分のことも、嵐のことも
当然、俺と付き合っていて別れたことも
「……そうなんだ……アイドルか……」
全部話して聞かせた
ただ1つ、俺と別れたことだけ除いて
「あなたと付き合っていたんだ……ごめんね、思い出せないや……」
「少しずつ思い出していけばいいよ」
「俺、あなたのこと何て呼んでたの?」
「翔さんって呼んでたよ」
「翔さん……俺たち一緒に住んでたの?」
「そうだよ。明日には帰れるから一緒に帰ろう」
「うん……」