第8章 声を聴かせて〜NJ〜 3
「ニノが…好き。あの頃の…どうしようもない程の苦しい想いと同じかって聞かれたら、やっぱり分からないけど…でも、でも本当に、好きなんだ。ニノが俺を見てくれなくなってから、心が寒くて…寂しくて…」
「うん」
「そんなの…優しくしてくれる相手を都合よく好きになっただけって言われるかもしれないけど…でも…それでも…」
こんなに穏やかに、温かい気持ちで誰かを愛せるなんて…
ニノが初めてなんだ。
翔君に対して感じていた狂おしい程の想いがなきゃ愛じゃないなら…これは愛じゃないのかもしれないけど…
それでも…こんな幸せな気持ちになれる想いを愛と言えないなら…
俺は、愛なんて、いらない。
愛とも呼べないこの想いが俺を幸せにしてくれるなら、俺はそれを愛って呼んで、そしてニノへと注ぐから。
「もういいよ、潤くん。ごめんね、俺が、言ったのに。側に居てくれるだけでいい、って言ったのに…潤くんに好きって言われたら、贅沢になっちゃって。潤くんが、どんな想いでも、いい。俺を好きでいてくれるなら、それで、いいから」
「カズは…俺に甘すぎるよ…」
「潤くんだから、だよ。潤くんだけ、だよ?」
その優しい笑顔にデジャブを覚えて…
そう…だ…
その笑顔は、俺がままならない自分にどうしようもなく足掻いていた頃…
その想いをぶつける歌をうたった時に、俺を見守ってくれていた、ニノの顔。
「カメラに抜かれてるとは思わなかった。残っちゃったじゃん」
って、照れて笑ったその顔まで、思い出せる。
「カズは…いつから俺が好きだった?」
「んふ、聞いちゃう?そこ聞いちゃったら、怖いかもよ」
楽しそうに笑ったニノが、俺の頬に手を添える。
「そんなの、出会ってすぐに決まってるでしょ。じゃなきゃ、意地悪もしないし。でも、あの頃から潤くんは翔さんのもので…俺なんか眼中になかったから…さ。悔しかったなぁ、なんで俺じゃないんだろう、って…俺ならもっと大切にして、笑顔にしてあげるのに、って」
「そう…なんだ…ごめん」
そんな想いにも気付かず、何度も何度も翔君事でニノに泣きつく俺を、それでも優しく包んでくれていたニノ。
俺は、どれだけその心を傷付けてきたんだろう。