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恋の話をしよう【弱虫ペダル】短編集

第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎


私は園芸係だ。
だから放課後はこうして校舎裏の花壇に行く。




「あー、それじゃ次は園芸係!誰かやりたい奴!」


クラスの自己紹介が終わった後、各係の選出が始まった。


「園芸係かぁー。あれって毎日花の面倒みるってやつだっけ?」

「え、めんどくさ!」

「ってか俺、部活あるしなぁ」

「私も放課後はすぐ塾に行かないと、、、」

「誰かいないのか〜?」


どうしよう、皆困ってる。
花は嫌いじゃないからやってもいいんだけど、でも自分から手を挙げるのは恥ずかしいな。


手を挙げようか迷っていた時、ふと顔を上げると東堂くんがいて。


その困ったように眉間に皺を寄せた横顔が見えた。

そして彼はゆっくりと右手を上げかけていて。


え、、、?


「あ、、、あのっ!」


私は彼が手を上げてしまう前に、思わず手を上げていた。


「お、なんだ?えーと、笹原」

「その、私、、、やります」

「え、いいのか?」

「あ、はい。私、部活も入ってないので、、、」

「そうか。じゃあ園芸係は笹原に決まりだな!」

「良かった〜!」

「助かったぁ」

「それじゃあ次は、、、」




恐る恐ると東堂くんを見ると、驚いたように私を見ていた。


気を悪くしただろうか、、、?


そう不安になった瞬間、東堂くんが微笑んだ。


私に向かって、、、。


その笑顔は驚くほど綺麗で、
あまりにも眩しくてすぐに目を逸らした。


目が合った、と思ったのは気のせいだ。
そんなわけない。


すぐに被りを振って姿勢を正す。
そう思い直しても、何故かドキドキと胸は大きく脈打って、痛くてなかなか治らなかった。


これはきっと、柄にもなく皆の前で手を挙げたりしたからだ。
きっと、そう。
そうに決まってる。そうに違いなかった。



あれから2週間。
結局、私はあれ以上の行動は何も起こせていない。
そしてまだ友達を作るという目標も。


それでも。



「ふぅー、終わったぁ」



1人でだって綺麗な花々に囲まれて。
水を撒いた後の雫が太陽に反射してキラキラ光るこの光景を見るこの時間は、とても幸せだった。







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