第24章 不安定要素
中「その様子だと未だ解決してねェみたいだな。」
『……。』
自宅への帰り道、主語が無くとも容易に分かる話に私は何も答えなかった。
中「頑なに譲らねェってことは、そンだけ愛理を大切に思っているってことだ。」
『分かってる。……此処でいいから。』
すっかり立場も都合も悪くなってしまった私は中也の返事も聞かずに走り出す。
何も考えたくない。
そんな意思とは裏腹に頭を占めるのは例の問題ばかり。
私はただ……人間でいたいだけなのに。
『ただいま。』
この時間ならば誰も居ないだろうと油断していた。
国「何処へ行っていた。もう二十時だぞ。」
『帰って来てたんだ。』
国「質問に答えろ。」
でた、お母さん。
めんどくさいモードだ。
『紅葉姐さんのところに行って来た。文化祭で衣装借りるから。』
国「……ほう。」
『中也に途中まで送ってもらったから危なくないよ。』
国「そう云う問題ではない。」
すうっと息を吸い込む姿を見て私は咄嗟に身構える。
国「大体行き先も告げずに出掛ける奴があるか。行き先と帰る時間は必ず知らせろと云っているだろう。手土産は持って行ったのだろうな?失礼な態度はとってないか?そもそもこんな時間まで異性と二人など無防備にも程がある。矢張り俺からも————『ストップストップ!!!』」
まだまだ云い足りないと云う顔をしながらもなんだ?と私の話を聞こうとしてくれる。
別段話したいことなど無い。
ただ言葉の情報量が多過ぎただけなのだ。
国「?何か云いたいことが或るんじゃなかったのか?」
『……うん、森さんは未だ諦めてないって。』
国「だろうな。」
腕組みをして遠くを見る彼の姿に云い様のない不安が襲いかかる。
『戻った方が良い?』
すると国木田は愛理の元へ近付くと拳を振り上げそのまま振り下ろした。