【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第5章 菊合
「私が駄目なら夫と寝るというの? 見境のない男ね」
「私もできるならそれは避けたいと思っています」
赤葦は、重なる脂肪が象皮のような模様を作っている女の太ももの内側を撫でながら、甘い声で囁いた。
「八重様に二度と近づかないでください。約束してくださるなら、貴方の望むままに“奉仕”いたします」
欲しがってヒクつかせているそこに、若い男の象徴をあてがう。
甘美な欲求というものは実に便利だ。
素面で同じ言葉を言えば大問題になろうことも、ベッドの上で快楽とともに言えば簡単に容認されてしまう。
「いいわ、約束してあげる。あんな孤児の小娘がどうなろうと、私の知ったことではないもの」
女は赤葦の陰茎を握ると、わざと卑猥な水音をたてながらしごき、年齢を感じさせる口元を歪ませた。
「赤葦は私のものになりなさい」
先ほど赤葦に旦那と関係を持つとほのめかされた時、腹が立ったのは赤葦に対してではなかった。
旦那に嫉妬すら覚えるほど、この若い男に肉欲を抱いている。
だが赤葦は首を横に振った。
「残念ながら、私は木兎家のものです」
木兎家のためでなければ、天変地異が起きても貴方を抱くことはなかっただろう。
この世に生を受けたその瞬間から、自分の生き方は決まっている。
この身体は指一本、髪一本にいたるまで木兎家のもの。
性器から吐き出される子種の一滴ですら、全ては光太郎と八重のためにある。
でも・・・
「その代わり、ご満足いただくまで快楽にお付き合いいたします」
闇の中で梟が鳴けば、誰かが犠牲になる。
「ああ、赤葦・・・! 食べてしまいたいほど可愛い子」
外では太陽が高く昇っているというのに、カーテンで閉め切られた部屋にはその光が届かない。
淫蕩な表情の女は自分が犠牲になっているとも気づかず、嬉々として梟の餌食となっていた。