第6章 素直なキモチ
春華「あれ?今日国見だっけ?」
昨日は花巻さんだったから、今日も3年生だとばかり思っていた。
国「別に。行こ」
頭に?を浮かべながら歩く春華。
その前を歩く国見が少しだけ緊張していたことを春華は知らない。
少しだけ歩いたけれど、なかなか会話が弾まない。
国見は家も反対だし、雪が少しちらついてきた。
幸い家までさほど遠くない場所まで歩いてきた。
もう大丈夫だろう。
春華「今日は、ここまででいいよ。送ってくれて、ありがとね」
国「いや、いいよ。暗いし、家まで送る」
はっと、マフラーに埋めていた顔を上げた国見と目が合う。
そしてカサリ、と音を立てた紙袋に視線がいく。
そのまま歩き出す国見の横に少し駆け足で並ぶ。
春華「……国見も、チョコ貰ったんだ」
国「え?」
春華「その紙袋、女の子からでしょ?」
そうだよ、の言葉が怖くて言葉を続けた。
国「いや、これは、『モテる男の子はいいねー』」
立ち止まる国見の前を数歩通り過ぎる。
春華「国見…?」
国見「……これは、そうじゃない」
春華「え?」
泳ぐ視線に戸惑う。
マフラーで顔を隠しているから、表情が良く読み取れない。
そして急に目の前に出された紙袋。
国「これは、春華のだから」
いつになく、はっきりとした声。
国「気に入らなかったら、捨てていいから」
少しだけ震えた手から紙袋を受け取ると、
チョコレートと包装された何か。
春華「……開けて、いいの?」
私の声も少しだけ震えていた。
コクリと頷いたのを確認して、
悴んだ手でゆっくりと開ける。
綺麗に開けれないのは、きっと寒さだけじゃない。