第11章 スタートライン
昨日はあれから、取り敢えずRe:valeの楽屋に戻って。
姉鷺さんからなにをどんな風に伝えられたのか、顔色を悪くした局の上層部の人が来て、社長を含めていろんな話をされた。
局側からしたら、厳重警備を謳ってる所へ部外者が入り込み、今回みたいな傷害、暴行未遂なんていう事実は隠したいのが見え見えの感じが伝わって来て。
さすがに社長もそれでは道理が通らないからと、珍しく声を張って届け出る場所へ届けを出すことになって。
念の為、病院へ行くことも了承させた。
万「愛聖、今日は社長が付きっきりで同行するって言ってたから」
『···分かってる』
寮で1人の夜を過ごすのも、あんな事があったのだからという社長の計らいで、私は1度は寮に戻ったものの、必要な手荷物や三月さんが作り置きしてくれた食事の容器を持って、万理と一緒に社長の家にお世話になった。
社長は自室で。
私は万理と一緒に空いてる部屋へと案内されて。
社長曰く···
小「さすがに僕が愛聖さんと布団を並べる訳にはいかないから、そこは万理くんにお願いするからね?」
万「えっ?!俺···ですか?!」
小「もちろんそうだよ?愛聖さんが寮に入る前までは万理くんの家に泊まってたんだし心配いらないでしょ?」
それは確かにそうだけど?!
小「それに、あんな事があって愛聖さんを部屋にひとりにする方が心配だ。いくら僕の家に連れて来たと言っても、ここは局に比べたら警備が整ってる訳じゃないからね···あ!でも!」
しんみりと話していた社長が急に声を大にしたと思ったら、社長は万理を見つめながら小さく笑う。
小「万理くん···僕は信じてるからね?」
万「社長···そこまで念を押さなくても大丈夫ですから···」
そこまで心配なら、いっそ隣の部屋同士とかにすればいいのでは?と思いつつも、これが社長のいつもの場の和ませ方だと分かってるから、私も敢えてなにも言わずにいた。
それに、隣の部屋は仏間になっていて。
そこには、社長の愛すべき奥様···つまり、紡ちゃんのお母さんがいて。
そんな大切な場所に私たちが寝泊まりする訳にもいかないしね。
少し離して用意した布団に潜り込み、何度か寝返りを打ちながらも、結局はあまり眠れず···朝を迎えることになった。