第4章 バレンタイン
エルヴィン達との打ち合わせを済ませたリヴァイは、自室に向かう途中でふと喉が渇いていたことに気がつき、調理場に寄っていくことにした。
調理場に隣接している食堂を覗くと、若い女性兵士達が集まって何やら楽しそうに話しているのが見えた。そのうちの一人が、入口からひょっこりと顔を出したリヴァイに気がつき、途端に緊張した面持ちになると、背筋を伸ばして敬礼した。
「あっ、リヴァイ兵長、お疲れ様ですっ」
リヴァイに気づいた他の兵士達も次々と敬礼をする。胸に当てた手とは反対の手に、皆一様に何か小さな箱のようなものを持っており、敬礼の動きに紛れてさっと身体の後ろに隠すのをリヴァイは見逃さなかった。
敬礼をする兵士達の表情は硬い。
だがそれは仕方のないことだと言えた。なぜなら、エルヴィン同様にリヴァイもまた、意図的に兵士達の前では厳しい顔を作っており、さらに彼はもともとの性格も決して社交的な方ではないから、「人類最強」という肩書きも相まって尊敬と畏怖の念を込めた眼差しを向けられているからだ。
(まぁ、俺なんざ煙たい存在だろう。上官ってのは誰でもこんなもんだ。だが、エルヴィンは随分と慕われているようだったな。・・・それでいい。あいつは調査兵団を導く存在だからな。嫌われ役は俺だけで十分だ)
などと思っていた。
「いい・・・邪魔したな」
リヴァイはフイと食堂から出て行くと、すぐ隣にある調理場へと向かった。