第6章 パンダと私の青空教室
きれいな満月だった。
近所の大きな公園を、私は伊豆くんと2人で歩いていた。
伊豆くん用の靴はまだ買ってあげていなかったので、私のサンダルを履かせてやった。全然サイズが合っていないので、ずい分歩きにくそうだ。
「もう裸足でいい」と、途中で彼はサンダルを脱いだ。夜中で人通りもないから、まあ許してあげよう。
人気のない公園。
ふたりでベンチに腰掛け、何をするでもなくボーッとしていた。
心が安まる。
思えば最近、すごく気持ちがゆったりしている。伊豆くんが来る前は、こんなこと全くなかった。
職場ではオッサン上司がセクハラ・パワハラをかましてくるし、それについて愚痴をこぼせるような相手もいない。毎日無理難題を突きつけられて、いつか辞めてやると思いつつ、他所にいい職場があるわけでもないのでズルズルと続けている。
田舎の高校から出てきて就職した私には、休日に一緒に遊ぶ友だちもいない。恋人は2回できたけど何か長続きしなかった。家族とは訳あってちょっと疎遠。わかっちゃいたけど、私って孤独だ。